同じ煙突でも、煙がよく広がる日と、地面近くに滞留する日があるのはなぜ?と思いませんか。カギは「大気安定度」です。気温が高さでどう変わるかで決まります。
この記事の要点
煙がよく広がるか(拡散するか)は、大気安定度で決まります。安定度は、実際の気温減率と乾燥断熱減率を比べて判断します。
煙突から出た煙が上下に広がるかどうかは、その日の大気の状態によって変わります。広がりやすい状態を不安定、広がりにくい状態を安定といい、これを大気安定度と呼びます。
安定度を判断するものさしになるのが、乾燥断熱減率です。これは、空気のかたまりが上昇して断熱的に膨張するとき、温度が下がる割合で、約1℃/100mです。
一方、実際の大気で高さとともに気温が下がる割合を気温減率といいます。この実際の気温減率と、ものさしである乾燥断熱減率を比べて、安定度を判断します。
実際の気温減率が乾燥断熱減率より大きい(高さとともに気温が急に下がる)とき、大気は不安定です。
このとき、少し上昇した空気のかたまりは、周りの空気より暖かく軽くなるので、さらに上昇します。こうして対流(上下の動き)が起こり、煙はよく拡散します。
逆に、実際の気温減率が乾燥断熱減率より小さいときは安定で、上下の動きが起こりにくく、煙は広がりにくくなります。
乾燥断熱減率(基準)より実際の気温が急に下がると不安定でよく拡散。上空ほど気温が高い逆転層は非常に安定で煙が滞留。
ふつうは高度が上がると気温は下がりますが、逆転層とは、上空ほど気温が高くなっている層のことです。気温の変化が普段と逆になっています。
逆転層があると、大気は非常に安定になり、上下の動きが抑えられます。すると、煙はフタをされたように上に広がれず、地表付近に滞留して、地上の濃度が高くなりやすくなります。
よく知られるのが、夜間に地表が放射冷却で冷え、地面に接した空気が冷やされてできる接地逆転です。
大気安定度は、大規模大気特論で、拡散に関わる基本として問われます。
令和7年度の大規模大気特論(問2)では、「強制対流が卓越する(風が強い)風速下では、大気安定度は中立に近づき、気温減率は乾燥断熱減率に近づく」という記述が、正しいものとして扱われました。強い風で大気がかき混ぜられると、安定でも不安定でもない中立に近づく、という関係です。
混同しやすい用語
安定 と 不安定
どちらが「よく拡散する」状態か、取り違えやすいところです。
不安定は対流が起きて煙がよく拡散する状態、安定は上下の動きが少なく煙が広がりにくい状態です。逆転層は安定の極端な場合です。
「実際の気温が急に下がる=不安定=よく拡散」「上空が暖かい逆転=安定=滞留」とセットで覚えます。
大気が「不安定」なのは、実際の気温減率が乾燥断熱減率より大きいときか小さいときか。また煙はどうなるか。
答え:実際の気温減率が乾燥断熱減率より大きいとき。対流が起きて煙はよく拡散する
乾燥断熱減率は約1℃/100m。これより実際の気温が急に下がるほど不安定です。
逆転層とは何か。煙の拡散にどう影響するか。
答え:上空ほど気温が高くなっている層。大気が非常に安定になり、煙が広がらず地表付近に滞留する
夜間の放射冷却でできる接地逆転などが知られます。
大気安定度は、煙の広がりやすさを決める要素です。
実際の気温減率を、ものさしである乾燥断熱減率(約1℃/100m)と比べ、実際の減率が大きいほど不安定でよく拡散します。逆転層(上空ほど暖かい)は非常に安定で、煙が滞留します。
強い風で大気がかき混ぜられると中立に近づく、という関係もあわせて押さえておきます。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
安定・不安定と「拡散しやすさ」の向きが狙われます。
逆転層(上空ほど気温が高い)は大気が非常に安定で、煙が拡散せず地表付近に滞留します。実際の気温減率が乾燥断熱減率より大きいと不安定でよく拡散、という基準と向きをセットで押さえます。