「環境基準」と「排水基準」、どちらも水質の基準ですが何が違うのか、上乗せ基準はどっちにかかるのか、で混乱しませんか。役割の違いから整理します。
この記事の要点
都道府県が条例で上乗せできるのは排水基準です。「上乗せ環境基準」という制度はありません。
水質の「基準」と名のつくものには、性格の違う2種類があります。
1つは、川や海をどんな状態に保ちたいかという目標。もう1つは、工場の排水が守るべき規制値です。
この目標が環境基準、規制値が排水基準です。役割を分けて見ていきます。
環境基準とは、人の健康を守り、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい目標として、行政が定める基準です。
水質の環境基準は、環境基本法にもとづいて定められ、公共用水域(川・湖・海)の水質がこうあってほしい、という水準を示します。
これは行政が目指す目標であって、個々の工場の排水を直接取り締まるためのものではありません。
たとえば「この川のBODは○mg/L以下が望ましい」という形で、達成・維持を目指します。
排水基準とは、工場・事業場の排出水が排水口で守らなければならない、濃度の規制値です。
排水基準は、水質汚濁防止法にもとづき、特定事業場から排出される水について全国一律に定められています。
環境基準と違い、これは直接の規制です。排水基準に適合しない排出水を出すと、改善命令の対象になり、罰則もあります。
さらに、全国一律の基準では足りない水域では、都道府県が条例でより厳しい「上乗せ排水基準」を定められます。
ここで大切なのは、上乗せできるのは排水基準だという点です。「上乗せ環境基準」という制度はありません。
2つの違いを表にまとめます。
| 項目 | 環境基準 | 排水基準 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 環境基本法 | 水質汚濁防止法 |
| 性格 | 行政が目指す望ましい目標 | 排出水を直接しばる規制値 |
| 対象 | 公共用水域(川・湖・海)の水質そのもの | 工場・事業場の排出水(排水口) |
| 守らないと | ただちに罰則ではない(達成を目指す目標) | 改善命令・罰則の対象 |
| 上乗せ | なし(「上乗せ環境基準」は存在しない) | あり(都道府県の条例で上乗せ排水基準) |
目標(環境基準)と規制値(排水基準)の関係を、図で押さえます。
排水基準は工場の排水口を直接しばる規制値。環境基準は、その水が流れ込む公共用水域の水質をこう保ちたいという目標。上乗せできるのは排水基準。
環境基準と排水基準は、水質概論で「どちらが規制値か」「上乗せの対象はどちらか」を問う形でよく出ます。
令和2年度 水質概論 問10では、都道府県が条例で定める上乗せの対象は排水基準であり、「上乗せ環境基準が設定されている」とするのが誤りでした。
令和5年度 水質概論 問3では、排出水の排出の制限が問われ、「汚染状態が特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならない」が条文どおりでした。
令和3年度 水質概論 問3では改善命令が問われ、都道府県知事が、排出水が排水口で排水基準に適合しない「おそれ」がある段階で命じることができる、が正しい組合せでした。
規制をかける軸はつねに「排水口での排水基準」だと押さえておくと、これらの条文問題に強くなります。
工場の排出水を直接しばり、違反すると改善命令の対象になるのは、環境基準か排水基準か。
答え:排水基準
環境基準は行政が目指す望ましい目標で、個々の排出を直接規制するものではありません。直接の規制値は排水基準です。
都道府県が条例でより厳しく「上乗せ」できるのは、環境基準か排水基準か。
答え:排水基準(上乗せ排水基準)
「上乗せ環境基準」という制度はありません。令和2年度 水質概論 問10の引っかけでした。
環境基準と排水基準の根拠となる法律は、それぞれ何か。
答え:環境基準=環境基本法/排水基準=水質汚濁防止法
環境基準は環境基本法で「望ましい目標」として、排水基準は水質汚濁防止法で「排出の規制値」として定められます。
環境基準と排水基準は、どちらも水質の基準ですが、性格がまったく違います。
環境基準は行政が目指す望ましい目標(環境基本法)、排水基準は排出水を直接しばる規制値(水質汚濁防止法)です。
上乗せできるのは排水基準で、「上乗せ環境基準」という制度はありません。試験では、規制をかける軸が「排水口での排水基準」であることが繰り返し問われます。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
上乗せの対象がどちらかが狙われます。
都道府県が条例で定める上乗せの対象は排水基準であり、「上乗せ環境基準が設定されている」とするのが誤りでした(令和2年度 水質概論 問10)。