排水基準は「濃度」の規制なのに、なぜ「総量」規制があるの?どんな水域が対象なの?で混乱しませんか。濃度規制との違いから整理します。
この記事の要点
総量規制とは、濃度の排水基準だけでは水質が改善しにくい閉鎖性水域で、地域全体の汚濁負荷量(量)の総量を減らす仕組みです。
対象は東京湾・伊勢湾・瀬戸内海などの指定水域で、対象項目はCOD・窒素・りんです。工場ごとの許容される汚濁負荷量は Lc=Cc・Qc×10⁻³ で計算します。
水質の規制というと、ふつうは排水の「濃度」を一定以下にする排水基準を思い浮かべます。
ところが、濃度を守るだけでは水質が良くならない水域があります。
そこで使われるのが、量の合計を抑える総量規制です。まず「なぜ必要か」から見ます。
排水基準は、排出水に含まれる汚れの濃度を規制するものです。
しかし、工場や人口が集中し、水の入れ替わりが少ない閉鎖性水域では、問題が起きます。
各工場が濃度の基準を守っていても、排出する水の量が多く、施設の数も多いと、流れ込む汚れの総量が大きくなり、水質が改善しません。
そこで、濃度だけでなく、地域から出る汚濁負荷量の総量そのものに目標を定めて減らすのが、総量規制です。
水が滞留する閉鎖性水域では、各工場が濃度を守っても合計の汚濁負荷量が大きい。だから量の総量を規制する。
総量規制は、すべての水域に行うものではありません。
水がたまりやすく汚濁が進みやすい指定水域(東京湾・伊勢湾・瀬戸内海)で行われます。
対象となる項目は、有機汚濁の指標であるCODと、富栄養化の原因となる窒素・りんです。
工場・事業場ごとに許容される汚濁負荷量は、次の式で計算します。
Lc = Cc・Qc × 10⁻³
記号の意味は次のとおりです。
つまり「濃度 × 水量」で、その工場が出してよい汚れの総量(負荷量)を決めます。
ここで使う特定排出水からは、その用途に供しても汚濁負荷量を増やさない水(専ら冷却の用に供される水=間接冷却水など)が除かれます。一方、洗浄用水は汚濁負荷量を増やすため、除かれず特定排出水に含まれます。除く・除かないの決め手は、用途の名前そのものより「汚濁負荷量が増加するかどうか」です。
総量規制は、水質概論で、算式や特定排出水の定義として問われます。
令和5年度 水質概論 問1では、総量規制基準の算式 Lc=Cc・Qc×10⁻³ と各記号の意味、特定排出水の定義が問われました(下線部の誤りを選ぶ問題)。特定排出水から除かれるのは「専ら冷却の用に供される水(間接冷却水)」など汚濁負荷量を増やさない水であって、洗浄用水は汚濁負荷量を増やすため特定排出水に含まれるのが論点でした(洗浄用を除く、とするのが誤り)。
「総量=濃度×水量」「除くのは冷却水(負荷を増やさない水)」を押さえておけば対応できます。
総量規制は、濃度ではなく何を減らす仕組みか。
答え:汚濁負荷量(量)の総量
各工場が濃度を守っても水質が改善しにくい閉鎖性水域で、地域全体の負荷量の総量を減らします。
総量規制の対象となる代表的な項目を挙げよ。
答え:COD・窒素・りん
有機汚濁のCODと、富栄養化の原因となる窒素・りんが対象です。東京湾・伊勢湾・瀬戸内海などの指定水域で行われます。
総量規制基準の特定排出水から除かれるのは、どんな水か。
答え:専ら冷却の用に供される水(間接冷却水)など、汚濁負荷量を増やさない水
洗浄用水は汚濁負荷量を増やすため、除かれず特定排出水に含まれます。決め手は「汚濁負荷量が増加するか」。令和5年度 水質概論 問1の論点でした。
総量規制は、濃度の排水基準だけでは水質が改善しにくい閉鎖性水域で、汚濁負荷量の総量を減らす仕組みです。
対象は東京湾・伊勢湾・瀬戸内海などの指定水域で、項目はCOD・窒素・りん。工場ごとの許容負荷量は Lc=Cc・Qc×10⁻³(濃度×水量)で決めます。
特定排出水から除くのは、間接冷却水など「汚濁負荷量を増やさない水」で、洗浄用水など汚濁負荷量を増やす水は特定排出水に含まれます。濃度規制との違いを押さえておきましょう。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
特定排出水から「何を除くか」が狙われます。
特定排出水から除かれるのは冷却の用に供される水(間接冷却水)など汚濁負荷量を増やさない水であって、洗浄用水は汚濁負荷量を増やすため特定排出水に含まれる(「洗浄用を除く」とするのが誤り。令和5年度 水質概論 問1)。