重金属はpHを上げれば水酸化物で沈むはずなのに、キレート剤が入ると沈まないのはなぜ?と思いませんか。キレートが金属を「封鎖」してしまうからです。整理します。
この記事の要点
排水にキレート剤(金属を強く包み込む薬品)が含まれると、重金属の処理が難しくなります。理由と対処を押さえます。
重金属は、ふつうはpHを上げて水酸化物にして沈めます。ところが、排水にキレート剤が含まれていると、この基本が通用しなくなります。
キレート剤は、金属イオンを強く包み込んで、安定なキレート錯体をつくる薬品です。
キレート剤に封鎖された重金属は、pHを上げても水酸化物にならず、沈みません。そのため、キレート剤の存在量が多くなると、pH調整だけの単純な水酸化物法では重金属を処理できなくなります。
なお、その影響の大きさは、キレート剤の種類、重金属の種類や濃度によって一様ではありません。
キレートで封鎖された重金属を除くには、置換法が使われます。
置換法とは、キレート剤で封鎖されている重金属を、別の金属(鉄など)で置き換え、追い出されて遊離した重金属を、水酸化物として沈殿させる方法です。
キレート剤に、重金属の代わりに別の金属を結びつけることで、もとの重金属を解放し、ふつうの水酸化物沈殿で除けるようにする、という考え方です。鉄塩とカルシウム塩を使う方法(鉄+カルシウム塩法)などがあります。
キレートで封鎖された重金属は沈まない。別の金属で置換して重金属を遊離させれば、水酸化物として沈殿できる。
キレート排水は、水質有害物質特論で、水酸化物法が効かない理由と置換法として問われます。
令和7年度の水質有害物質特論(問2)では、「キレート剤の存在量が多くなると、pH調整のみの単純な水酸化物法では重金属は処理できなくなる」「置換法は、キレート剤で封鎖されている重金属を他の金属で置換し、置換された重金属を水酸化物として沈殿させる方法である」が、正しい記述として並びました。
混同しやすい用語
水酸化物法 と 置換法
どちらも最後は水酸化物として沈めますが、キレートがあるときに通用するかが違います。
キレートに封鎖された重金属は、単純な水酸化物法では沈みません。先に置換法で別の金属に置き換えて重金属を遊離させてから、水酸化物として沈めます。
「キレートあり=水酸化物法だけでは無理=置換法で遊離させてから沈める」と押さえます。
排水にキレート剤が多く含まれると、なぜ単純な水酸化物法で重金属が処理できないのか。
答え:キレート剤が重金属を安定な錯体として封鎖するため、pHを上げても水酸化物にならず沈まないから
影響の大きさは、キレート剤や重金属の種類・濃度によって一様ではありません。
置換法とは、どのように重金属を除く方法か。
答え:キレートで封鎖された重金属を別の金属(鉄など)で置き換え、遊離した重金属を水酸化物として沈殿させる方法
別の金属をキレートに結びつけて、もとの重金属を解放するのがポイントです。
キレート剤を含む重金属排水は、ふつうの水酸化物法では処理しにくくなります。
キレート剤が重金属を錯体として封鎖するため、pH調整だけの単純な水酸化物法では沈みません。対処は、別の金属で置き換えて重金属を遊離させる置換法です。
「キレートあり=水酸化物法だけでは無理=置換法」という流れを押さえておきます。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
キレートがあるときに、単純な水酸化物法が効くかどうかが狙われます。
キレート剤が多いと、pH調整だけの単純な水酸化物法では重金属を沈められません。キレートが金属を錯体として封鎖するためです。対処は、別の金属で置き換えて重金属を遊離させる置換法、と押さえます。